NPO法人TEDIC/代表理事 門馬優

YU MONMA OFFICIAL BLOG - NPO TEDIC -

川崎殺傷事件について

容疑者が「ひきこもり」傾向であった(と推測される)ことと殺傷事件を起こしたことを、先入観や一般論的に紐づける論調や、報道姿勢に危機感を感じてる。
 
「ひきこもりだから、事件を起こした」
「ひきこもりは、犯罪予備軍だ」
 
そのように受け取れるような、誤解を招くような報道は、現に今なお、「どうしたら」と悩みながら、この瞬間も生き続けている「彼ら」に、グサりとナイフを刺していることに、気づいたほうがいい。
 
「うちの子が、このまま不登校が続いて、あの人みたいに事件が起こしたら、どうしよう。」そんな不安が、現に相談ケースでも保護者から寄せられ、相談員が対応している。「早期のアウトリーチを求める」声もあがっている。
 
千葉県野田市での虐待事件後に、文科省通知によって「『2月1日以降、一度も登校していないすべての児童生徒』に対して面会などを通して緊急点検をするよう全国の学校などに要請した」ということがあった。現場の運用レベルでは、「とにかく、会いに行かなきゃ」と焦って訪問に乗り出す支援機関もあった。今回も、同じような流れになるのかどうか。
 
安易なアウトリーチほど、傷つけることはない。色んな思いが錯綜して、どうしようも出来なくて、自分自身を守るために、最後の砦に「ひきこもった」にもかかわらず、その砦を「本人の思いを無視して」突破しようとするようなアウトリーチは、もはや誰のためのアウトリーチなのか。
 
いま現にひきこもっている人も、そうでない人も、不登校の人も、そうでない人も・・というか、そんなラベル関係なく、この社会に生きるひとり一人が、「(一般論的な)社会」の名のもとに追い詰められたりすることなく、生きていくためには、何が出来るのか。
 
私たちの日常と、この事件は地続きでつながっている。むしろ、見るべきは、向けるべき矛先は自分たちの足元なんじゃないかと思う。