NPO法人TEDIC/代表理事 門馬優

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不登校の子どもたちが通う民間教育施設(いわゆるフリースクール)における出席扱いについて

最近、子ども・若者総合相談センターでの相談や、法人のほっとスペース石巻等の場面において、学校や教育委員会自治体、保護者から問合せが多いので、まとめてみました。

 

※そもそもの不登校の定義はこちらからどうぞ。

 

http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/futoukou/03070701/002.pdf

 

①民間教育施設(いわゆるフリースクール)でも、出席になるの?

 

・平成15年5月16日 15文科初第255号「不登校への対応の在り方について」という通知によって、学校長が一定の条件(=保護者と学校との間に十分な連携・協力関係が保たれていること等)とともに学校への復帰を前提とし,かつ,不登校児童生徒の自立を助けるうえで有効・適切であると判断した場合に指導要録上の出席扱いとすることが出来ます。

 

http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/04121502/021.htm

 

・つまり学校長に、学校外教育施設(公的機関、民間教育施設)に通所、入所した場合の「指導要録上の出席扱い」の判断が、委ねられているということです。民間教育施設の場合は、設置者である教育委員会と密に連携をとり、判断することとされています。

 

・ちなみにフリースクールはあくまで「通称」であって、学校や保育所等のように認可基準があるものではありません。したがって、ここでは「民間教育施設」としたいと思います。

 

不登校はあくまで定義上の状態であり、実際は子どもの数だけ多様です。したがって、本人にとっての「不登校児童生徒の自立を助けるうえで有効・適切とされること」も多様であるため、一律に国や自治体が学校外教育施設を認可する形ではなく、一番子どもたちに近い現場である学校が、個別の状況に応じて、弾力的に判断できるようになっています。

 

・しかし、現実には「個別の状況に応じて、弾力的に判断」することが、現場レベルでは難しかったり、児童・生徒ごとに「認める」「認めない」をしたりすることが、他の児童・生徒への配慮等から難しいという声を、よく耳にしていました。結果として、学校長ごとに「この施設は指導要録上の出席扱いとする」「この施設はしない」といった運用が多くされている印象です。

 

自治体独自の取り組みとしては、兵庫県尼崎市教育委員会が「民間通所施設を認定」し、認定を受けた施設に通所すると「指導要録上の出席扱い」とするという動きがあります。あくまで、尼崎市がこの制度を始めたことで「民間教育施設が出席扱いになった!」わけではなく、「学校長が可否を判断していた」ものから、「教育委員会フリースクールを認可する」ものに変わったということです。

 

http://www.city.amagasaki.hyogo.jp/manabu/school/consult/1016209.html

 

・まとめますと、現行の制度上でも、民間教育施設への通所・入所によって、「指導要録上の出席扱い」とする・されることは、可能です。また、理屈上は、フリースクールと名乗っていない民間教育施設でも、指導要録上の出席扱いは可能ですし、農業や漁業など体験に重きを置くような教育施設でも、NPO法人でも、社会福祉法人でも、法人格などに関わらず、学校長が判断すれば「指導要録上の出席扱い」となることがあります。

 

※ちなみに民間教育施設のほか、適応指導教室石巻では「けやき教室」という通称)が公的機関として設置されており、地域によって(大阪府池田市など)は公設民営での運営がなされている場所もあります。

 

宮城県では、県教育委が沿岸部を中心に「心のケアハウス」を設置しています。適応指導教室と棲み分けしている自治体もあれば、適応指導教室の強化として活用している自治体もあります。

 

不登校児童生徒の出席扱いに関する通知は、上記の通知を別添する形で平成28年9月14日に出され、その後も多様な教育機会確保法成立を受けて平成29年3月28日に通知が出されるなど、その後も文科省より出されています。高等学校における扱いは「不登校に関する調査研究協力者会議の最終報告書」でも言及されましたが、今回は割愛します。

 

②「指導要録上の」出席扱いってどういうこと?

 

http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/gakuryoku/faq/001.htm

 

・学校が作成する書類に「指導要録」「通信簿(通知表)」「調査書(内申書)」と呼ばれるものがあります。

 

・「指導要録」は、「児童生徒の学籍並びに指導の過程及び結果の要約を記録し、その後の指導に役立たせるとともに、外部に対する証明(「通信簿」や「調査書」など)等の際の原簿となるもの」とされていて、いわばマスタデータのようなものになります。

 

・「通信簿(通知表)」は、「各学校において、子ども自身や保護者に学習状況を伝え、その後の学習を支援することに役立たせるために作成されているもの」で、その扱い、記載内容や方法、様式などは各学校の判断で工夫できるものになります。

 

・「調査書(内申書)」は、「高等学校等の入学者選抜のための資料として作成されるもの」で、各都道府県教育委員会等で、様式や記載事項が決められるものになります。

 

・通知ではあくまで、「指導要録上の出席扱い」としているのみなので、理論上は「通信簿(通知表)」や「調査書(内申書)」上での出席扱いとしているわけではありません。

 

・逆に言えば、「指導要録上では出席扱いだが、内申書上では「フリースクール出席○日」と記載する」といったことが起きる可能性は0ではないということです。(現にそういった運用をしている学校とも、出会うことがありました。)

 

・砕けた言い方をすれば、学校長が「指導要録上での出席扱い」とした場合でも、それがすなわち「(他の登校している生徒と同様に)受験のための出席日数としてカウントされる」というわけでは、必ずしもないということです。

 

平成28年12月に義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律(通称:多様な教育機会確保法)が成立しましたが、法文上では具体的な措置(例えばフリースクールに認可制度を用い、経済的拠出をするなど)までは明文化されていないため、現行では冒頭の通知による運用が続いているものと理解しています。

 

このあたりは、現在も文科省で継続的に(いわゆる夜間中学も含めて)議論がなされているので、気になる方はこちらから議事録や資料を読んで頂くとよいかもしれません。

 

http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1412035.htm

 

※この投稿の目的は、特定の思想や教育観を表明することではなく、現行の制度理解を広めることです。

 

※ちなみに法人では、本人やご家族、学校等とも相談しながら、双方の希望があれば、適応指導教室等に準ずる様式で、出席状況や活動の様子を学校にお送りし、現在在籍している児童・生徒については、すべて「指導要録上の出席扱い」として頂いています。