NPO法人TEDIC/代表理事 門馬優

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改・生困法。

朝から職員の発熱連絡(!)が事務局を駆け巡り、ほっとスペース運営と学校ヒアリング、トワイライトスペース、アウトリーチ、出張相談会、来所面談、電話相談・・・のシフト調整に悪戦苦闘。なんとか、職員の皆さん&チューターの大学生の力で乗り切りました。風邪流行ってるので、みなさんもご注意あれ。

 

そんな今日は、午後から学校ヒアリングに2校。アウトリーチでの家庭支援の必要性をたまたまどちらの学校でも強調されておられ、「子どもへの指導じゃもう無理で、家庭に関わってくれる支援が必要なんですよね」と。支援や制度、設置された会議が「ある」ということと、運用が「ある」ことは別で考えないといけないですねと議論。校納金の滞納問題や、学区外通学の問題など、たくさんの貴重なご意見を頂戴しました。あとは、民間団体を信頼して良いかどうか(学校の場合、教育委員会との協働実績があるかが大きそう?)という話もでましたね・・。この辺りは、地域でも取り組まなきゃ。

 

夕方戻ってからは、チューターのみんなと一緒にトワイライトへ。久々に小学生と一緒に人生ゲーム。2回やって、1回目はスケート選手、2回目はサッカー選手。サッカー選手の給料はルーレットの目×5,000$。高額給料の職業を一目散に選ぶ大人と、「この仕事がいい!」と選ぶ子どもと、このギャップが何とも・・ですね。

 

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この週末は熊本県で開催された「第5回生活困窮者自立支援全国研究交流大会」に参加。「子どもの学習・生活支援」分科会でパネラーの1人として、「総合相談センター」「生活困窮世帯の子どもの学習支援業務」と、複数の制度や事業を横断的に現場で繋げて、他機関協働で実践する仕組みについてお話してきました。

 

・学習・生活支援事業は、単なる学力向上の取り組みではなく、子どもが抱える困難に伴走し、共に解決を目指す「子ども版自立相談支援」と位置付け、多機関・多職種連携の上、体制をつくっていきたい。

・生活困窮者の実態は多様であり、単純に要保護・準要保護・児童扶養手当受給といった、経済的要件(収入要件)で切り取れるものではない。”生活困窮”を社会的孤立の視点からも捉え、弾力的に「現に生活に困窮する”子ども”」を支える運用を考えていきたい。

・「利用申込」があってから事業開始ではなく、「利用申込」をどのように届けるのかを考えるところから。子どもの権利の視点から、契約行為(事業利用申請)を自らすることが出来ない子どもの立場に寄り添う、繋がり方のデザインにこだわっていきたい。

・地域包括ケアシステムと生活困窮者自立支援法は、切り離されて議論されるものではなく、より一体のものとして、自治体でのあるべき形を考えたい。既存の多職種の支援者が縦割りではなく、分野横断的にチームを組めないか。あるいは個人が役割を負う支援者のあり方から、組織が役割を負う形に転換出来ないか。

・「消火」と「防火」の視点から、生活困窮者自立支援法を用いることで、地域に暮らす一人一人が、地域の中の困りごとに目を向け、相互扶助を営むことができる、地域づくりを推進していきたい。

 

この大会には第1回の兵庫県開催のときにも、同じ分科会でパネラーをさせてもらっていて、それ以来4年ぶりの登壇。登壇後に、「実は4年前の第1回大会でお話聞いていて、それから4年経って頑張ってらっしゃって、母親のような気持ちで聞いていました」と、ある自治体職員の方からお声がけ頂きました。ありがたし。

 

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全国から各フィールド(自治体、NPO社協、議員、企業・・)のスペシャリストが集結する中で「プロフェッショナル」なみなさんとの懇親会にもお邪魔させていただき、本当に恐縮でした。

 

今回の改正・生活困窮者支援自立支援法、学習支援事業では「子どもの学習支援」が「子どもの学習・生活支援」となったことによって、各論的に「食事提供が出来るようになる!」や「子ども食堂的な取り組みも対象になるのでは?」といった議論もあるかと思います。小学生以下の子どもへの支援への加算も見ながら「アウトリーチ」の強化の文脈が非常に強いと感じます。「子ども」を入り口にしながら、世帯全体への包括的支援にどう繋げるのか。

 

また、自立相談支援事業では、新たに設置される「支援会議」によって、「支援調整会議」の前段階に、「本人の同意がなくとも」生活困窮者に関する情報を関係機関で共有できるようになったことも、大きな変化です。個人的にはサポステ、子・若、要対協等、子ども・若者分野だけでも複数設置されている会議と、有機的に横断できると良いなぁと思っています。

 

・・・こういった現場にダイレクトに響く変化も、しっかりと受け止めねばなりませんが、特に噛み締めたいと思うのは、この条文です。

 

第2条「生活困窮者に対する自立の支援は、生活困窮者の尊厳の保持を図りつつ、生活困窮者の就労の状況、心身の状況、地域社会からの孤立の状況その他の状況に応じて、包括的かつ早期に行わなければならない。」

 

これまでの旧法では、条文上には生活困窮者の定義として「経済的困窮(=ハウスレス)」しか書かれていませんでした。しかし、今回の改正で「社会的孤立(=ホームレス)」に言及がされたことは、非常に大きいと思っています。収入要件等で整理しやすい経済的困窮と比べて、定義しづらい社会的孤立に踏み込んでいること、ここに現場で「顔の見える支援」を続けてこられた先輩方の熱い思いを感じます。

 

現場の運用レベルで「この人は社会的孤立している」「この人は社会的孤立していない」といった、選別的議論が起きる可能性も否めませんが、いわゆる「地域共生社会」の実現とこの文脈を捉えた時に、「何のための、法なのか」を改めて問いただす現場でありたいと強く思います。

 

「地域共生社会って言っても、正直ピンと来ない。それが、52歳の山田さんがいて、また一方で78歳で障がいを抱えておられる花子さんがいて、そして自分がいて、どうやって共生するのか。それやったら考えられるし、でも、それは決して綺麗な画ではない。そのための一歩を、我々が覚悟して、みんなで踏み出せるかが問われている」とおっしゃっていたあるお方の言葉を胸に、明日も現場、頑張ろうと思います。